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きものが受け継がれる6つの理由

2015.03.16

サイズ調整ができるから受け継がれる

どんなに素敵な洋服でも、サイズが合わなければ着られません。たとえばスカート。ウエストサイズが5センチ違ったら、着心地が悪いですね。

きものは、ハーフデザインの衣服といわれていて、仕立上がった段階では、その衣服のデザインはまだ半分しか完成されていません。きものを着ていく過程での、技術や感性、その時の心のありようなど、様々な要素がプラスされて、はじめて衣服として完成されたデザインになります。このことは、後に詳しく触れるとして、今回はサイズと深く関係する”技術”についてお話しします。

たとえば、ウエストサイズ。きものは巻きスカートの様に前を重ねて着るように仕立てられていますので、見栄えよく巻き付ける技術があれば、ウエストサイズはさほど気にしなくても大丈夫です。

あるいは丈。身長差のある方からいただいたスカートは、たとえウエストサイズがあっていたとしても、スカート丈は、くださった方が着ていた時とは随分印象が違ってしまうのではないでしょうか?そして、それを長くすることはできませんし、デザインによっては切って短くすることもできないかもしれません。しかしきものは、はおると30センチほど引きずるくらい長く仕立てられていて、その長いきものを端折り上げ、ウエストあたりをひもで縛って着ますので、極端な身長差でない限り、縛る位置に気を付ければ好みの長さに着ることができます。

このようにきものは、ちょっとした工夫と技術があれば上手に着こなせるようにサイズに関しては洋服よりアバウトに仕立てられています。

それでも体型の差が激しくて着られない場合。なんと、仕立直す事ができるのです!きものは、幅40センチ弱、長さ12メートル程の細長い布(反物)を使って仕立てます。
この写真はきものの後ろ姿です。
きものが受け継がれる6つの理由

後ろ中央で右身頃、左身頃を縫い合わせて仕立ててあることがわかります。洋裁ですと、たとえば後ろ身ごろが25センチなら、残りは切り落として縫いますが、和裁の場合、切らずに脇縫いに縫い込んでおきます。ですから、たとえば後ろ身頃30センチの人がこのきものを着たいと思った場合、脇縫いをほどいて縫い込んでおいた残り布から5センチを出せばいいのです。
同様に腕の長さも違う場合、縫い込んでおいた袖部分で調整すればいいのです。

これは、直線裁ち、直線縫いのきものだからできることで、洋服のように曲線があると、余った布を上手に縫い込むのは難しいでしょうね。

 

流行に左右されないから受け継がれる

お母様から譲り受けたきもの、時代遅れで着られない!という事にならないのでしょうか?

お洋服は、どちらかと言うと柄のないものの方が多いですね。それは、形で変化をつけられるからだと思います。たとえばフリルがたくさんついているお洋服は、無地のほうがフリルの良さを出しやすい。あるいは、セクシーなお洋服の場合、無地の方が身体のラインがはっきりする。

対してきものは、形が統一されています。この事も受け継がれてゆく1つの理由でした。形による流行がないわけですね。そして、統一されたその形のほとんどが平面です。なので、キャンパスに絵を描くような感覚で柄づけ出来ます。柄があると流行り廃りが激しいのではないか、と思われるかもしれません。そうなると受け継いでいくのは厳しくなりますが、お洋服ほどの流行はありません。なぜでしょう。

きものの柄は、ほとんどが自然をモチーフにしています。春夏秋冬という四季を持つ、恵まれた気候風土の日本。私達日本人は、この四季折々の自然の美しさをきものに写し取り、季節を楽しんできました。美しい草、美しい花、美しい山、美しい鳥・・・自然を美しいと感じる心に流行り廃りはありません。お母様から譲り受けた桜柄のきものは、お嬢様の代でも、決して色あせる事なく美しく咲くでしょう。